キルレを稼ぐロリババア『エスター ファースト・キル』

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 ほんの少し古い映画に『エスター』という作品があった。ざっくり説明すると、養子として引き取られた美少女のエスターが実は病気で外見だけ幼いアラサーだったっていう映画なのよ。それだけなら年齢で嘘を吐かれた結婚詐欺みたいなものだけど、実は殺人鬼であら大変っていうね。

 そのエスターが養子として引き取られる前の物語を描いたのが本作で、個人的には水戸黄門のような展開を期待していた。ところが序盤(ある場所を出るまでの展開は除く)の雰囲気はコメディで、なんとなく嫌な予感があった。そしてそれは当たってしまうのだった……。

 話は変わるけど、人の好みってのはそれぞれ違う。食事でいうところのパン派と米派というくくり以外にも、パンならソフト系かハード系。米にしたって白米や玄米、炊き込みご飯にチャーハンと数えきれないくらいの好みがあり、なんでも食べる悪食がいれば偏食だっている。

 この作品を観る前の私は、とにかく残酷で恐ろしい刺激的なスパイスカレーを求めていた。スプーンでルーとご飯を掬い上げるその時まで、私はカレーを食べられるものと信じていたわけよ。けれどもそれはスパイスカレーではなく、優しい味付けのハヤシライスだった。

 当然ながらこの作品でも人は死ぬ。それもエスターの手によって。これがエスターではなく、恐怖! 愛に飢えた美少女は入れ歯のロリババア! ってタイトルだったら別によかった。しかしこの映画はエスター。その外見と知能を活かしたエスターが賢く立ち回る恐怖が見たかった。

 もしかしたら思い出補正が働いているのかもしれないけど、オリジナルのエスターはもう少し賢かったように思う。なんというか、知能指数が高い人に子供の外見という武器を与えた感じ。残念ながら本作のエスターはそうではなく、衝動的な子供といった印象でしかない。

 賢い設定な割に計画性がなければ見通しも甘く、感情を抑えつけて冷静沈着にタスクをこなすスマートな姿も見られない。それでも良かった点を挙げるとすれば、それなりにスプラッター要素はあったっってところ。そういう描写が見たい人の欲求はある程度満たせる。

 今作はエスターが好きな人に向けた続編に過ぎず、オリジナルを超えることもなかった。前作を観ずとも理解できるストーリーではあるが、エスターの要素がなければありがちなホラー映画に留まっている。果たしてこれがエスターでないといけない理由はあったのだろうか。

 まるで一発屋の漫画家が落ち目になってからヒット作の続編を描いたかのようで、わざわざ続編を作らないほうがよかったのではないかと思った。あまりオススメはできないけど、エスターみたいな映画を観たい(つまり前作の軽いファン)って人にはいいかもしれない。

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