エロゲ会社で働いていた人が思ったこと

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エロゲ会社のグラフィッカーは奴隷なの?

 昨日の夜、ひまりチャンネルにこんな動画が上がっていた。

 エロゲ会社のグラフィッカーに採用されたけど辞めたという人が居て、その人が書いたツイッターのネタを元に話すというもの。この動画ではそちらのネタを補足したり、内容が合っているかどうかといった会話が繰り広げられている。ちなみに私は動画の方で初めてそのネタを知った。

 過去にゲーム会社で働いていた私はエロゲもがっつり作っていたので、自分の知識や経験を共有することはできる。そこで覚えている範囲の(自分が関わってきた中で)事実をだらだら書いていこうと思う。あと先に書いておくけど、社会人に向いていない人はどこに行っても務まらないよ。

エロゲ会社で気になること

エロゲ会社って残業代が出ないの?

 自分が関わっていた範囲では「え、残業代? ウチは出るよ。当然でしょ」という会社はなかった。ついでに給料自体も安い。それでも働いている人はいるわけで、やりがい搾取と言われればその通り。だから面接でしっかり確認して、納得できなければ最初から働かなければいい。
よそで話を聞いたら割と給与が貰える会社もあったから、結局は会社と能力次第

試用期間の間は保険証がないの?

 これは同じ。私のいた会社は保険証がなかった。ただし試用期間だからじゃなくて、社員になっても存在しなかった。正社員扱いなのに国民健康保険。これはネタになっている会社以下。自分の手出しが増えるわけだから手取りは減る。ボーナスもなかったよ。でも飲み会は会社持ちだった。

新人でも即戦力が求められるの?

 そりゃそう。この人は社会人を舐めているかエロゲ会社をポジティブに捉えすぎてるなあと思った。新人教育がしっかりしたところは地盤がある。一定の収益と人材を確保していないとそもそも教育なんて無理。大手でもそこまで儲かっていないような業界に過度な期待をしてはいけない。

 お金がないってことは余裕がない。つまり新人だろうがある程度の能力は期待する。これはどこの業界でも一緒。一般企業でも少しでもいい人材を確保する為に学歴や面接でフィルタリングする。きつい言い方をすれば、30社も落ちるような人はスキルがないか性格に問題がある。

 それでもグラフィッカーになりたいって人は、うだうだ不平不満を並べ立てる前にひたすら塗り続けるしかない。それに絵も描ければそのうちフリーでイラストレーターとして活躍できる可能性もある。絵は下手でも塗りは一流って人も中には居るから、頭を使って塗り続ければいい。
ちなみにスチル一枚に一週間は緩い。言うまでもなく時間を掛けるほどに利益は減る

 ここまで書いても「手っ取り早くグラフィッカーになりたい」って人は、若いんだったら自分を育ててくれる会社を探そう。若くないんだったら諦めるか、それでも雇ってくれる会社を探してしがみ付くしかない。エロゲ会社に限らず、若さも技能もない人は誰も欲しがらないのだから。

エロゲ会社はブラックなのか

 結論から言えばブラック。

  • 給料が低い
  • 賞与が出ない
  • 残業が多い

 ブラック企業の基準もそれぞれだろうけど、上記の問題点を抱えたところは多い。それでもそこで働く人はいるわけで、大抵は好きだから続けているというパターンが多い。中には一般的な企業に向いていないからとそこで働く人も居るだろう。ただこれもエロゲに限らない。

 私はグラフィッカーではなく、エロゲ会社にはディレクターとして入社した。ディレクション4割の雑用(グラフィック周り、スクリプト周り、音声周り……etc)6割だった気がするものの、それでも何年か続けられたのはエロゲが好きだったからに他ならない。愛は大事。

 今は同人でも一定水準に達していれば生きていく程度の稼ぎは得られる。エロゲを作って稼ぎたいだけならひたすら同人ゲームを作るのもいい。世間体や安定性を求めて法人格を必要とするのであれば、自分で会社を立ち上げるのも一つの手ではある。それでうまくいけば儲けもの。
世間体という面でいえばエロゲの時点で不利なのは事実。ついでに一般向けも作って隠れ蓑にすると良し

雑な総括

 今回わざわざこんな記事を書いたのは、エロゲ業界=酷い業界というイメージを植え付けられるのが嫌だったからに他ならない。元ネタの方は非常に短い期間しか働いておらず、それも殆どが病欠では何の参考にもならない。しかし主語が大きく、一定数の視界に入ってしまった。

 個人の意見を発信するのはいい。とんでもない色眼鏡を掛けた人が、雲一つない青空を見て「変な色の曇り空だ」と言ってのけるのも個人の自由ではある。今でもエロゲ業界で働いていた経験を良いものだと思っている身として、個人的な主張をしたくなったわけよ。

 ちなみに残業代は出ないと書いたけど、私の居た会社は途中から残業がほぼ無かった。というか無駄な残業が嫌いだったので定時で帰れる雰囲気と流れを作った。周りに帰宅を促して自分も率先して帰宅する意思とメンタルがあればなんとかなる。エロゲ会社も根性だぜ!

 あと即戦力とは言えない人が入ってくることはあった。プランナーでもグラフィッカーでもスクリプターでも居た。待遇は同じ条件で、仕事をしながら教育もしていた。育ってきたかと思えばもっといい条件の会社に行ったり、一般企業に行ったり……まるで職業訓練校。

 エロゲ会社もピンキリで酷いところもあればそうでもないところもある。ただ業界全体がブラック寄りではある。美少女キャラが好きなだけだったら、今ならブラウザゲーやスマホゲーで美少女キャラを取り扱う会社に入った方がいい。そちらの方がまだホワイト寄りだから。

 ただ誤解して欲しくないんだけど、どこの会社でも報連相は大事。仕事である以上は納期を守るのは当然で、守れそうにない時は早めに判断して上長に指示を仰がなければならない。締め切りの前日に遅れを報告もせずに帰ろうとするような人は組織での仕事を諦めた方がいい。

 このご時世でもパワハラが横行する現場や上司は存在するから、無理だと思ったらすぐに辞めた方がいい。二週間で向いていないから辞めると判断できる人は凄い。向いていないと思いつつも正義感や義務感で働き続けて精神的にも肉体的にも壊れる人も居るんだから。

 でも意味のある説教と意味のない説教について考えるのは大事。言い方は悪くても正論だったら聞く耳を持たないといけない。説教をしてくるその人自体が嫌いだったり既に心が病んでしまっていたりすると、判断力も思考力も失われているかもしれないから、例を挙げておく。

初歩的なミスをするな
 それはその通り。グラフィッカーなら彩色で色を間違えるとか、レイヤーの順番が違うとか。スクリプトだと立ち絵を間違えるとか。要はケアレスミスを防ごうって話。

何日も掛けておいてエロくない絵にするな
 馬鹿みたいに見えるかもしれないけど、エロゲだからエロは大事。原画が微妙でも塗りでエロくなることもある。それに時間は大事。時間と比例してクオリティが求められる。

修正に必要な時間は正しく申告しろ
 怒られていると機嫌取りだったり自尊心を保ちたかったりで嘘を吐きたくなることもある。ただその場しのぎではまた怒られる。スキルと内容を振り返り、確実に完了する時間を伝えよう。

指示書は読め
 読め。理解できないなら理解できるまで読め。それでも理解できないなら聞け。自信がなかったら成果物と一緒に自分の解釈を共有しろ。どうしても無理だと思ったら別の仕事を探そう。

 だらだらと長文を書いてしまったけど、思うにエロゲ業界を舐めている人が多いんじゃなかろうか。確かにゲーム業界自体が他の業界と比べると緩く、エロゲ業界は同じ業界の中でも特に緩い。それでも法人組織として成り立っている以上は、サークル感覚で仕事をされても困る。

エロゲ業界で働きたい人へ

 エロゲ業界で働きたいと思っている人は、ブラック企業で働くという覚悟が必要だよ。一般企業のお堅い雰囲気が無理で、緩そうだからエロゲ業界で働きたいって人は止めておいた方がいいかもしれない。最初から塗りかスクリプト、それか動画なりができるって人は別だけども。

 何らかのスキルがあって、それがそこで役に立つんだったら多少我儘でも重宝される。逆に何のスキルもないような人はお荷物でしかないから、熱意を見せるしかない。ただ熱意があって何のスキルもない人なんて滅多にいないから、その熱意で何を成し遂げたかを説明できないときつい。

 ゲーム業界に入れなかったからエロゲ業界に入るなんて気持ちの人は止めておいた方がいい。スキルがない人ほど環境が整った職場を選ぶべきで、お金がないエロゲ業界に求められるのは常に即戦力。スキルがないというレッテルを貼られた人は実力に向き合う機会と捉えよう。

 エロゲ業界はブラックだけど楽しい。中にはエロゲ会社に入って後悔する人も、潰れる人も居るだろう。しかしよく考えてほしい。それは本当にエロゲ会社が悪いのだろうか。自分自身には何の問題もなかったのだろうか。もし他の会社でも同じことを繰り返すのであれば……。

 会社なんて山ほどあって、合う会社も合わない会社もある。自分にとってやりがいがあって、スキルを発揮できて、納得できる条件の会社を見つけない限りはブラック談議も終わらない。若い内は転職でもなんでもして色々試した方がいい。意外な適正が見つかるかもしれないんだから。

 こんな文章を先月会社を辞めたオッサンが書いているのが一番のお笑いよね。

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